• テキストサイズ

【呪術廻戦】無下限恋愛

第20章 呪胎戴天


 その姿で現れるのは2度目。

 同じ肉体。

 それでも纏う空気は虎杖くんと真逆。

 虎杖くんの朗らかな空気とは正反対の、殺伐とした冷ややかな空気。


《……ほう》


 宿儺と視線が交差する。

 虎杖くんの身体を乗っ取った〝特級〟と称されるその呪いが、私の目の前に歩み寄り、私の前にしゃがみ込んだ。


 私の顎を右手でグイッと上向かせ、宿儺は口角を上げる。


《やはり、いい女だ。……呪いを浴びて、さらに美味そうな身体になったな》


 ケヒッと笑って、宿儺が私に顔を近づける。

 けれど、その途中で、宿儺の視界にその姿が映り込んだのか。

 宿儺は目の前にいる呪霊の存在に視線を移した。


《……ああ、そうか。オマエもいたんだったな》


 宿儺は小さくため息を吐くと、気怠げに立ち上がって、呪霊のほうへと歩み寄る。

 私たちに対してはケタケタと笑い続けていた呪霊が、宿儺の前では怯んでる。


(……嘘でしょ)


 私たちが触れることさえできなかった呪霊の身体に、宿儺はいとも簡単に触れて、その肩をぽんぽんと叩いた。


《少し待て、今考える》


 そう告げて数秒。

 宿儺が視線を上向かせて、言葉通りに何かを考えている。

 呪霊は宿儺の命令を聞いているわけではなさそうだけど。

 でも宿儺に手を出せずにいる。

 さっきの私たちと同じ。

 この呪霊も宿儺という〝恐怖〟を前に、動けずにいるんだ。

 私が呪霊の動きに注意を払っていると、思案が終わったのか、宿儺がニヤリと笑った。


《おい、ガキ共を殺しに行くぞ。付いて来い》


 虎杖くんの右手の指を治して、宿儺が告げる。

 宿儺が踵を返して、伏黒くんたちのほうへ向かおうとしたから。


「だめ……っ!」


 軋む身体をなんとか動かして、宿儺の前に両手を広げて立ち塞がった。
/ 612ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp