第20章 呪胎戴天
その姿で現れるのは2度目。
同じ肉体。
それでも纏う空気は虎杖くんと真逆。
虎杖くんの朗らかな空気とは正反対の、殺伐とした冷ややかな空気。
《……ほう》
宿儺と視線が交差する。
虎杖くんの身体を乗っ取った〝特級〟と称されるその呪いが、私の目の前に歩み寄り、私の前にしゃがみ込んだ。
私の顎を右手でグイッと上向かせ、宿儺は口角を上げる。
《やはり、いい女だ。……呪いを浴びて、さらに美味そうな身体になったな》
ケヒッと笑って、宿儺が私に顔を近づける。
けれど、その途中で、宿儺の視界にその姿が映り込んだのか。
宿儺は目の前にいる呪霊の存在に視線を移した。
《……ああ、そうか。オマエもいたんだったな》
宿儺は小さくため息を吐くと、気怠げに立ち上がって、呪霊のほうへと歩み寄る。
私たちに対してはケタケタと笑い続けていた呪霊が、宿儺の前では怯んでる。
(……嘘でしょ)
私たちが触れることさえできなかった呪霊の身体に、宿儺はいとも簡単に触れて、その肩をぽんぽんと叩いた。
《少し待て、今考える》
そう告げて数秒。
宿儺が視線を上向かせて、言葉通りに何かを考えている。
呪霊は宿儺の命令を聞いているわけではなさそうだけど。
でも宿儺に手を出せずにいる。
さっきの私たちと同じ。
この呪霊も宿儺という〝恐怖〟を前に、動けずにいるんだ。
私が呪霊の動きに注意を払っていると、思案が終わったのか、宿儺がニヤリと笑った。
《おい、ガキ共を殺しに行くぞ。付いて来い》
虎杖くんの右手の指を治して、宿儺が告げる。
宿儺が踵を返して、伏黒くんたちのほうへ向かおうとしたから。
「だめ……っ!」
軋む身体をなんとか動かして、宿儺の前に両手を広げて立ち塞がった。