第2章 流呪操術
「あー、でも僕も疲れた。ここ最近、皆実の手続き関係で動きまくってたし」
五条先生はそう言って、飛び込むように私の隣に寝転ぶ。
そもそもこのベッドは1人用にしては大きい。
五条先生は身長高いけど横幅はそんなにデカくないのに。
まあ、この顔だし。いろんな人連れ込んでてもおかしくないけど。
「皆実」
五条先生が体を私の方に向ける。
距離は一定を保ったまま。
「なんですか?」
「腕まくらしてあげようか」
「結構です」
「即答じゃん」
五条先生は笑う。
私に触れたら、無防備になっちゃうのに。
何言ってんだろ、この人。
「早く私のベッド用意してください」
「えー、別に今のままでいいでしょ。不便感じない」
「私は感じてます」
「じゃあ、何が不便?」
五条先生は少しだけ距離を詰めてくる。
愉快そうに、私をからかって遊んでる。
「落ち着いて寝れないです」
「いつもいびきかいてぐっすりじゃん」
「かいてないです。私これでも年頃の女子なんですよ」
「なに、意識しちゃう? 僕のこと」
しないわけないじゃん。
一応私も年頃の女子なんだから。
五条先生にはそう見えてないのかもしれないけど。
「皆実はかわいいね、ほんと」
「バカにしてますか?」
「ううん。これは本気」
五条先生はそう言って私の頭を撫でる。
だから私に触ったら、無防備になるっていうのに。
「皆実」
「今度はなんですか?」
「……ごめんね」
静かな五条先生の声。
珍しく口角も上がってない。
たぶんこの声に冗談はなくて、きっとあるのは誠意のみ。
「無理やりキスして、ごめん」