第20章 呪胎戴天
虎杖くんが屠坐魔を収めてた布鞄のベルトで、自分の腕を縛って止血している。
(この気配と、この強さ……)
目の前の呪霊の等級は特級以外ありえない。
そして、ここに特級を祓える呪術師は存在しない。
でも、呪術師じゃなければ――。
「ここまで近づかれたらもう逃げらんねぇ。俺が死んだらオマエも死ぬんだろ。それが嫌なら協力しろよ、宿儺!!」
虎杖くんが自分の体内に存在している〝特級〟に命令した。
けれど、返ってきた言葉は私たちの願いを簡単に打ち砕く。
《断る》
「……!!」
《オマエの中の俺が終わろうと切り分けた魂はまだ18もある》
けれどそう告げる宿儺の声に愉快な色はなく、不快な色を帯びていて。
虎杖くんの顔に現れた唇がつまらなそうに言葉を続けた。
《とは言え、腹立たしいことにこの肉体の支配者は俺ではない。代わりたいのなら代わるがいい》
まだ、勝機はある。
そう確信するのと同時、宿儺の発言はまた私たちをどん底に突き落とす。
《だがその時は呪霊より先にそこのガキを殺す。次にあの不遜なおんな。アレは活きがいい。楽しめそうだ》
伏黒くんと野薔薇ちゃん、2人を殺す宣言をして。
宿儺の口がニヤリと笑った。
《そしてすべて殺した後、皆実を喰う。その四肢のすべて、余すことなく頂く》
ゾワリと、新たな悪寒が私の身体を襲った。