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【呪術廻戦】無下限恋愛

第20章 呪胎戴天


(う、わ……)


 むせ返る血の匂い。

 溢れかえる呪いの痛み。

 私の誘導でたどり着いた場所には、原型を留めない遺体が散らばっていた。


「惨い……」


 遺体から目を逸らし、野薔薇ちゃんが苦しげな顔で呟く。


「3人……でいいんだよな」


 伏黒くんはこんな惨状を前にしても、あくまで冷静に状況を把握してる。

 私は虎杖くんと一緒に、転がってるバラバラの遺体を観察した。

 四肢がもがれて半身だけとなった遺体が1体と、身体がぐちゃぐちゃに折れ曲がって丸まった遺体が2体。


(丸まった2体は……元の顔すら分かんないな)


 1つは皮が剥がれて筋肉が剥き出しになっているし、もう1つも顔が完全に変形して分かんない。

 でも半身だけ残った遺体はある程度原型を留めてる。

 その遺体に虎杖くんが触れて、その衣服をグイッと引っ張った。


(岡﨑……正)


 遺体の服に書かれた名前は、あの女の人が呼んでた名前と同じ。

 私がそれに気づくのと同時、虎杖くんが口を開いた。


「この遺体、持って帰る」


 虎杖くんの発言に、野薔薇ちゃんが戸惑った。


「あの人の子供だ。顔はそんなにやられてない」

「でもっ」


 野薔薇ちゃんが止めようとするけど虎杖くんは聞く耳を持とうとしない。

 その顔は悲痛に歪んでいた。


(この人もあの女の人も……虎杖くんの知り合いでも何でもないのに)


 虎杖くんはまるで自分の知人の遺体を前にしたかのように、その死を正しく弔おうとしている。


「遺体もなしで『死にました』じゃ納得できねぇだろ」


 虎杖くんの言うことは、確かに正しいんだけど。

 でもこの状況下では、その正しさが間違いに変わる。


「虎杖くん、今は……」


 私がそう告げようとするのと同時。

 伏黒くんが虎杖くんの襟元をぐいっと引っ張った。
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