第20章 呪胎戴天
「ドアがなくなってる!! なんで!? 今ここから入ってきたわよね!?」
虎杖くんも野薔薇ちゃんも扉が消えたことに気づいてしまった。
慌てた二人が、混乱の末に踊り始めてる。
(強いな……この2人)
普通は私みたいに不安で身体強張ると思うんだけど。
この様子なら、おそらく2人は大丈夫。
だから問題は、もしものときにここから脱出する方法。
伏黒くんもそう思ったのか、玉犬に腕を回し声をかけてる。
「いけるか?」
伏黒くんの問いかけに、クンクンと玉犬が反応を返す。
そうして伏黒くんが安心するように表情を緩めた。
「大丈夫だ。コイツが出入り口の匂いを覚えてる」
次いで、伏黒くんが私に視線を向ける。
「綾瀬……オマエもいけるか?」
体内に流れてくる少年院自体に巣食う呪いと、同じ気配の塊を辿れば呪胎の場所も把握できる。
そしてその逆も然り。
呪いの気配が途切れる場所、そこに出口がある。
「うん、出口は奥に移動してる。……本体の気配より向こう側」
私がそう答えると、野薔薇ちゃんと虎杖くんの表情がぱあっと明るくなった。
そして野薔薇ちゃんが私の頭を、虎杖くんが玉犬の頭をわしゃわしゃと撫でくりまわす。
「緊張感!」
はしゃいでる2人を伏黒くんが叱咤するけど。
2人の顔は依然明るいまま。
そして虎杖くんが私と伏黒くんの顔を見て朗らかに笑った。
「やっぱ頼りになるな、伏黒と皆実は。オマエらのおかげで人が助かるし、俺も助けられる」
虎杖くんの笑顔に、私は笑顔を返せなかった。
伏黒くんの無言の意味も、私には分かった。
「……進もう」
先の見えない暗い道を、伏黒くんは進んでいった。