第20章 呪胎戴天
(……なに、ここ)
一歩足を踏み入れた瞬間、足が軋んで音をたてる。
扉の向こう側……そこには古ぼけた寮の造りがあるはずなのに。
私たちの先にあるのは、パイプだらけの……まるで、カラクリ城。
「?? どうなってんだ!? 2階建ての寮の中だよなココ」
「おおお落ち着け! メゾネットよ!」
虎杖くんと野薔薇ちゃんがあたりを見渡して動揺してる。
そんな中、伏黒くんだけが冷静に……でも少しだけ驚いた顔で周囲を見ていた。
「伏黒くん、これ……」
「……あぁ」
不確かな情報と不可思議な状況。
今この段階で虎杖くんと野薔薇ちゃんを混乱させるわけにはいかないから、私は伏黒くんに小さな声で話しかけた。
伏黒くんは私の問いかけに小さく頷いて、目の前のカラクリを見上げる。
「呪力による生得領域の展開……こんな大きなものは初めて見た」
そう呟いて、伏黒くんはハッと後ろを振り返る。
「扉は!?」
振り返った先に扉はない。
私たちが入ってきた扉は跡形もなく消えていた。