第20章 呪胎戴天
少年院内に通じる扉の前。
そこで伊地知さんが立ち止まる。
この先が、おそらく呪胎の根城。
(やっぱり……この気配は……)
私は虎杖くんを見上げる。
でも虎杖くんはやっぱり何も反応を示さなくて。
(もしそうなら……宿儺が反応するはず)
やっぱり私の勘違いなのかもしれない。
けど、不安は拭えなかった。
そしてその不安を拭えないまま、伊地知さんが指を立てた。
「〝帳〟を下ろします。お気をつけて。『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」
帳が下りる。
黒い闇が私たちを包み込む。
「夜になってく!」
「〝帳〟。今回は住宅地が近いからな。外から俺たちを隠す結界だ」
帳に興味津々な虎杖くんに、伏黒くんが冷静かつ簡潔に教えてあげる。
(……帳、か)
帳が下りるのを見るのは、もう何回目だろう。
でも私の記憶の中、帳が下りた世界の光景はいつも悲惨だから。
(何も……起こらないといいんだけど)
身体を摩る私の隣で、伏黒くんが手を合わせた。
「玉犬」
式神の白い犬が現れる。
そしてその式神が私の隣にやってきて尻尾を振りながら座った。
私に触れたら消えちゃうって分かってるんだろうな。
「賢いね、君は」
私はしゃがみ込んで玉犬の白に声をかける。
本当は頭を撫でてあげたいけど、それができないから、笑いかけることしかできなかった。
そんな私のそばに虎杖くんが来て、私の代わりに玉犬をモフモフ撫でてあげていた。
「呪いが近づいたらコイツが教えてくれる」
扉の前に立って、伏黒くんが私たちに告げる。
「行くぞ」
扉を開けて、私たちは呪胎の根城に足を踏み入れた。