第20章 呪胎戴天
「我々の〝窓〟が呪胎を確認したのが3時間程前。避難誘導9割の時点で現場の判断により施設を閉鎖。『受刑在院者第二宿舎』……5名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されており、呪胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に相当する呪霊に成ると予想されます」
特級……。
この気配と、少年院に巣食う既存の呪いの量と質を考えれば、一番当てはまる等級だ。
おそらく、その予想は……的中する。
私がゴクリと唾を飲んだのと同時、伏黒くんと野薔薇ちゃんが険しい顔をした。
恐らくみんな考えていることは一緒。
ただ1人を除いて。
「なぁなぁ俺特級とかまだイマイチ分かってねぇんだけど」
虎杖くんが彼らしい能天気な発言をしてくれたから、一気に空気が和んだ。野薔薇ちゃんは半目で遠い目してるけど。
虎杖くんは呪術師になってまだ2週間くらい。
その前は呪いも見えない一般人だったわけだから、等級自体理解してないのは当然。
だから、というわけでもないんだろうけど。
伊地知さんが丁寧に虎杖くんに等級について解説した。
すごく分かりやすくて、びっくりしたけど。
(だから、五条先生が無理難題言うんだ)
その有能さゆえに五条先生にパシられてるんだろうなって、納得した。
そんな私の背後で伏黒くんが虎杖くんに追加説明を始める。
「本来、呪霊と同等級の術師が任務に当たるんだ。今日の場合だと五条先生とかな」
「で、その五条先生は?」
「出張中。……だったよな、綾瀬」
「うん。朝、家出て行ったよ」
私がそう告げると、野薔薇ちゃんが興味なさげに呟いた。
「まっ、五条がいなくてもなんとかなるわよ。お土産だけ楽しみにしておきましょ」
「あー……『お土産は期待すんな』って言ってたよ」
補助監督のお迎えが来たとき、不機嫌MAXな五条先生が『みんなにそう伝えとけ』って言い残して行った。
五条先生の出張を知ったら、野薔薇ちゃんあたりが『お土産』と言い出しそうだから、とそんな伝言を頼まれたけど。
案の定だった。