第20章 呪胎戴天
(目敏いなぁ……)
伏黒くんは私のことを気遣って、伊地知さんにそう進言した。
呪力の気配からして、最悪小学校の事件の時みたいになりかねない。五条先生がいないこの状況で私が下手に動くのは危険。
でも伊地知さんは首を横に振った。
「上からの司令ですので、例外は認められません。綾瀬さんも任務に参加です」
伊地知さんは静かに告げる。
その顔は少しだけ不安げだった。
伊地知さんもあの小学校での事件のことを知っている。
あの後、呪いが廻った私を五条先生とともに家まで連れ帰ってくれたのは、他でもない伊地知さんだったから。
だからおそらく、伊地知さん自身も、呪いの祓えない私が任務に参加することに消極的なんだと思う。
そんな伊地知さんが私を任務に送りこむということは……。
それだけ強い命令……〝上層部〟といわれるお偉方からの命令なんだ。
(余計に、怖いんだけど)
これが〝ただの呪霊退治〟じゃない気がしてくる。
(それに……)
少年院の奥から、一際濃い呪いの気配がする。
でもこの気配は、今私の隣にいる虎杖くんの気配と同じで。
(……指、あるのかな)
虎杖くんの呪力の気配……それはつまり宿儺の気配ということ。
でもそんな特級呪物があるのなら、その情報が予め開示されているはず。
まだ気づかれていないだけなのか、あるいは私の勘違いか。
考える私の目の前で、伊地知さんが改めて状況説明を開始した。