第2章 流呪操術
※五条視点
倒れかけた皆実を抱きかかえた。
背後で夜蛾学長が両手を広げていた。
皆実を受け止める気満々だったらしい。なんか悪いことしちゃった。
「ね、面白い子でしょ?」
「術式は使えないって言ってなかったか? 悟」
夜蛾学長が僕を睨んでる。
使えない、というか使わせないつもりだったんだけどね。
早速約束破るとかいい度胸してるよ、ほんと。
「ろくに使えてないんだから使えないのと一緒ですよ」
「使えるようになれば脅威の術式だぞ」
自他両方の呪力を操る流呪操術(るじゅそうじゅつ)。
酩酊(めいてい)は吸収した相手の呪力のみに集中して、行動不能にする術式。
一万人の呪力が体内に流れてる中、たった1人の呪力のみを感知するなんてまず不可能だし。長くは続かない。
集中力が切れれば終わり。頭使いすぎて無駄な糖分消費。
「先日の事件でも使ったのか」
「僕が来る前に数回使ってたみたいですね。意識が戻るたびに。でもほんの数秒だけ呪霊の動きを止めてどうなるって話ですよ」
本当にかわいそうな子。
無尽蔵の呪力があっても、それが利点とならない術式。
だからこそ……アイツは助けたかったんだろうね。
「で、合格? 不合格?」
「どうせ不合格だといっても、無理やり合格にさせただろう。すでに制服も作っているとはな」
夜蛾学長は頭を抱え、そして僕に背を向けた。
「合格だ。寮を案内してやれ。それから……」
「あー大丈夫、大丈夫」
僕がヒラヒラと手を振る。
「皆実は僕と一緒に住むから。ほら、監視下だし」
呪骸のパンチが飛んでくる。
いつもはじっとしてても、当たることはないんだけど。
今は皆実を抱えてるから、しっかり避けた。
「悟、警察呼ぶぞ」
「アハハッ、そのときは夜蛾学長の職質のほうが先ですよ」
そう言って笑ってたら、普通に夜蛾学長に頭を叩かれた。
ま、叩かれてあげたってのが本当だけど。