第2章 流呪操術
「君、何を……っ」
学長さんの動きが止まる。
学長さんの力のこもらない腕を握って、私はその場に座り込む。
ここは呪いの声が静かだから集中できる。
たぶん、10秒。
「今の私じゃ……あの世であの人にありがとうって、言えないから」
きっとここでは、あの人の話は禁句だろうな。
もしかしたら、この人たちはあの人を知ってるのかもしれない。
あの人の最期も知ってるのかも。
「私が心の底から笑えるように」
あの人は、最期笑ってたかな。
「もし死んじゃった時、あの世で大好きだった人に助けてくれてありがとうって言えるように」
ああ、もう限界が近い。
頭がクラクラする。
「生きててよかったって言えるように。私は、ちょっとだけ、強くなりたい……です」
頭がふわふわして。
真正面から倒れた私を、何かが支えた。