第2章 流呪操術
中には、強面な男の人が編み物をして待っていた。
すごい、なんか可愛いぬいぐるみがたくさんいる。
なんという……アンバランス。
「アハハッ、皆実。思ってること顔に出すぎ。落ちるよ?」
「うるさいぞ、悟。もう少し落ち着いた話し方をしろと言ったハズだぞ」
高笑いをあげる五条先生にビシッと注意する。
おそらくこの人が学長さんだ。
「僕が落ち着いて話したら冗談を本気に捉えられて、まるで僕が性格悪いみたいになっちゃうでしょ」
(いや、悪いじゃん)
「皆実」
「何も言ってません」
私と五条先生のやりとりを聞いていた学長さんが小さなため息を吐いて、私の方を見た。
この人もこんな暗い蔵の中でサングラスかけてるんだ。
高専の流行りなのかな。
「……その子が?」
「あ、えっと…… 綾瀬皆実です。無趣味無特技です。呪いを祓ったりはできません。よろしくお願いします」
「皆実、受かる気ある?」
五条先生がクックッと喉を鳴らしてる。
受かる気も何も事実を述べただけなんだけど。
私の自己紹介を聞いた学長さんは態度を変えない。
「何しに来た」
「え? えっと、入学試験を受けに……」
「何故?」
尋問のような空気。
私はくるりと顔だけ振り返って五条先生を見るが、五条先生は他所を見てる。
(わざとだ!)
絶対手助けはしないって言いたいんだな。
まあ、入学試験なんてそんなもんだけどさ。
「私、呪力のコントロールできなくて。……そもそも呪力がなんなのかもいまいち分かってないっていうか。そういうのも含めて学びたくて」
「何故」
「な・ぜ」
繰り返した私を見て、五条先生が肩を揺らしてる。
懸命に声殺してる姿が視界の端に見えて悔しかった。
何故しか言えないのかな、この学長さん。
「呪いを学び、制御して、その先に何を求める」
「……へ、平穏な生活?」
「何故」
(ふぁー……)
「自らの呪力を制御できたところで、君の関与なく呪いの被害は数多生じる。それで平穏な生活が送れると? 考えが甘い。不合格だ」
そう言って学長さんは、手をかざす。
それと同時に傍にいたかわいいぬいぐるみが立ち上が……立ち上がった!?