第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
聞かなくても、分かることだったのに。
大切な親友を失うことが、平気だったわけないのに。
五条先生に辛い言葉を言わせてしまった。
「皆実には……絶対言わないつもりだったんだけどね」
自分のほうが辛いはずなのに、五条先生は私の心を心配してくれて。
解かれた髪を撫でる手が、悲しいくらい優しかった。
「僕が憎い?」
憎めたら、幸せだったよ。
何で殺したのって、責めることができたら楽だったよ。
でもどうしたって憎めるわけないじゃん。
責められるわけが、ないじゃん。
「五条先生は、誰よりも……あの人のこと救いたかったんでしょ」
五条先生だけが、あの人を救えたの。
救う方法が、たったそれだけしか残ってなかっただけ。
五条先生だけが、あの人をこの世界から解放してあげられたの。
だから……。
「傑さんは……きっと幸せでしたよ」
最期に大好きな親友に会えて。
最期の瞬間まで、困り顔で笑う傑さんが、頭に浮かぶの。
「五条先生と最期に会えて、きっと幸せでしたよ」
よかったね、って。
思い出の中のあの人に告げたら、笑いかけてくれるの。
私じゃ、ダメだったんだよ。
あの人の最期に、私もそばにいたかったけど。
きっと私じゃ、最期の瞬間にあの人を笑わせられなかった。
他の誰でもなく、五条先生じゃなきゃダメだったんだよ。
「皆実」
五条先生の手が髪を滑って、私の頰に触れる。
サングラスを外して、五条先生が私の顔を見つめてる。
綺麗な瞳に、泣き出しそうな私が映ってる。
「アイツは最期の瞬間も、皆実のことを想ってたよ」