第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
「だから、五条先生は私を助けてくれたんですね」
あの人が助けた私を、五条先生が助けてくれた。
何の理由もなく、こんな呪いまみれの私を助けるなんて、絶対にありえないって思ってたから。
やっと見つけた理由に、心の底から納得して。
呪いなんて、どこからも流れてこないのに。
チクリと心が痛んだ。
「うん、そうだよ」
頷いた五条先生の顔を、私は見れなかった。
俯いた私の頭に五条先生の手が乗って。
「最初は、そうだった」
続いた言葉が、私の心の棘を抜いた。
「おとなしく守られてくれるだけの女の子でいてくれたらさ……僕にとって皆実は『傑の忘れ形見』のままでいられたんだよ」
私の頭を優しく撫でて、五条先生の手が私のポニーテールをクルクル回して遊び出す。
「それなのに、僕を頼らないし、約束は破るし、口は悪いし、すぐ反抗するし、よく泣くし、料理は下手っぴだし、無自覚男タラシだし、おまけにエロいし」
「最後のは余計ですよ」
「一番重要でしょ」
五条先生はため息を吐いて、薄く笑った。
「危なっかしくて、放っておけないじゃん。どんな育て方したら、こんな無防備になんのって」
五条先生が私の髪を解く。
ずっと結んでたから、解いたらボサボサになるのに。
文句を言おうとしたけど、私の文句の声は五条先生の声に重なって、負けてしまった。
「アイツに呆れたよ。……あんなバカなことするくらいなら、せめて皆実を最後までちゃんと育てとけよって」
最後――。
その言葉に、深い意味はなかったのかもしれないけど。
でも本当に、私とあの人の思い出は、去年のクリスマスイブが、最後だった。
「五条先生」
あの日、あの人は東京にいたよ。
なんでもお見通しの先生が、それを知らないはず、ないんだよね。
「五条先生はあの人の最期を……知ってるんですよね」
あえて、問いかけなかった。
断定系で告げたのは、その確信があったから。
よく考えればわかることだったの。
「うん、知ってる」
私の記憶の中――私にとっての『最強』を、もしも殺めることができるとしたら。
「……僕が、殺したよ」
それは誰もが認める『最強』しかありえないって。