第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
パレードの流れに逆らって、私と五条先生は歩いた。
パーク内の人たちはみんな、パレードの方に集まってるから。
パレードから遠ざかれば遠ざかるほど、パレードの楽しい音楽も、人の声も遠くなっていく。
まばらな人影。
静かな園内。
日が落ちて、パーク内の明かりだけが照らす暗がりの道。
それでも私と五条先生は手を繋いでいた。
「もう、来ないと思ってました」
私が静かに告げると、五条先生が私を見下ろした。
「来ないわけないじゃん。僕がどれだけTDLを楽しみにしてたと思ってんの?」
なんで若干キレ気味なんだろう。
私の言い方が悪かったのかな。
「……さすがにこの時間になっても現れなきゃ、来ないと思いますよ」
「僕だって好きでこんな時間まで仕事してたわけじゃない」
五条先生は不機嫌を隠さない。
私の手をしっかり繋いだまま、五条先生はため息を吐いた。
「人がせっかく超スピーディに特級祓ったってのに、やれ『すぐに報告しろ』だ『報告書が汚い』だ『敬語を使え』だ、ブツブツブツブツうるさいのなんのって」
最後の方のお小言は絶対五条先生が悪い。
「人が懇切丁寧に報告してやっても全然理解しないんだから。マジで頭腐ってんだろうね、アイツら。皆実よりバカじゃん」
「なんで私と比較するんですか」
「バカ代表でしょ」
これでもそんなに成績とか悪くないんだけど。
五条先生はいつも私を「バカ」って呼ぶ。
そこまでバカじゃないのに。……そりゃあバカなことしちゃう時もあるけど。
(でもそんなに「バカ」って言わなくていいじゃん)
唇を尖らせて、あからさまに『不服』と書いた私の顔を、五条先生が覗き込んだ。
「何、文句ある?」
「文句しかないです」
「奇遇だね。僕も今は絶賛皆実に文句しかないよ」
言葉とは裏腹の満面の笑みで五条先生が言った。
少しだけ凄みのある言い方だから怯んでしまって、私はゴクリと生唾を飲んだ。
「まっ、とりあえず甘いものでも飲んで話そっか。このままだとカリカリしすぎてパーク吹っ飛ばしそう」
本当に吹っ飛ばしかねないから、怖かった。