第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
「綾瀬」
「なに?」
「今日はちゃんと楽しめたか?」
伏黒くんが私を見下ろす。
その目には、だらしなく頰の緩んだ私が映ってる。
「楽しそうに見えなかった?」
「いいや、楽しそうだったけど」
「じゃあなんで聞くの?」
私がクスリと笑うと、伏黒くんが小さく息を吐いた。
「オマエ、五条先生いないといつも寂しそうな顔するから」
「してないよ」
「してるんだよ。見てる方には分かる」
即否定した私を、伏黒くんが即否定した。
でも伏黒くんの顔はすごく穏やかで。
「五条先生がいなくても、オマエが楽しめたならよかったって……それだけ」
伏黒くんはそう言って、そっぽ向いた。
耳まで真っ赤だから、照れ臭いんだろうなって。
たぶん私のために言ってくれたんだろうなって分かったから、私はそれ以上何も言わなかった。
周りの楽しげな声だけが私たちを包む。
繋いだままの手が、私たちの間にわずかな違和感を残してて。
もう離していいよって、そう言いかけたけど。
美しい音色が私たちの耳を奪って。
パレードが始まった。