第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
「女子は純粋に私を嫌ってくれてたからまだ楽だったよ」
結局、私に向けられた感情は全部呪いに変わったから、楽も何もないんだけど。
そういう理由で、私は高校に行くつもりもなかった。行ったって呪われるだけだって分かってたから。
でも世間体を気にした祖父母が私を進学させた。本来はさせてくれたっていうのが正しいんだろうけど。
「高校に入っても、すぐに《綾瀬皆実》って名前が独り歩きして。入学して1ヶ月も経たずに、いろんな人に告白されたよ」
名前も知らない誰かに、言葉だけの好意を伝えられた。
「でもその中に、すっごく人気者の先輩がいたみたいで」
女子生徒の呪いで、学校中がうるさくなった。
一歩足を踏み入れれば身体を廻るいろんな声が私を責めた。
《綾瀬皆実が色目を使った》
《男好き》
《言うほどかわいくないくせに》
《先輩はみんなの憧れだったのに》
《アイツがたぶらかした》
たくさんの声が私を罵った。
「なのにみんな、私に笑いかけるんだよ。『おはよう』って」
私が通ってた高校で起きた鏖殺事件は、そんなときに起きた。
「その先輩のことを好きだった女子の先輩に、すれ違い様に階段から突き落とされちゃって。……頭怪我したら、呪霊が来ちゃった」
そうして私の血を吸った呪霊が、すべて殺した。
でも、欠陥だらけの私の感情は、それを悲しいなんて思えなくて。
やっぱり誰かのせいにしようとするの。
どうしたって私のせいなのに。
こんな性悪な私を誰も好きにはならないって、自分が一番よく分かってた。
「だから、別に私はモテてたわけじゃないんだよ」
私は笑うけど、野薔薇ちゃんも虎杖くんも、伏黒くんも、誰も笑わなくて。
(あー……失敗したなぁ)
「なんか空気悪くしちゃったね……ごめんね」
なんでせっかくみんなで楽しんでるときに、こんな話をしちゃったんだろう。
後悔だけが頭の中をぐるぐる廻る。
申し訳なくて、俯こうとしたら。
野薔薇ちゃんがその場で立ち上がって、私の額に手を伸ばした。