第2章 流呪操術
五条先生の家から外に出た。
今まで住んでいたのは群馬県。今は東京都心。
《今日も仕事かよ、だる》
《あーあ、また先輩に怒られるのかなあ》
一歩外に出たら、たくさんの呪いの声が流れてきた。
(さすが、都会)
呪いの量がまるで違う。
微量な呪いだけど多すぎる。
(……これは血抜く頻度増やさないとだよね)
こうしてる今もどんどん流れてくる。
でも、なぜだろう。
五条先生の部屋にいたときは不思議なくらい呪いの声が流れてこなくて。
もしかして、先生が何かしてくれてたのかなって……。
カシャ、カシャ、シャリリリリリ。
いや、うるさ。
「いいねえ。制服似合うね! さっすが僕、センスあるー」
隣を歩く五条先生が素早い動きで様々なアングルから私の姿を写真に収めている。
なんなんだこの人。
呪いの声もそりゃあ静かに聞こえるわけだよ。
「……今から高専に挨拶ですか?」
「うーん、まあそんなとこ。学長と面談……っていうか入学試験みたいな」
「え」
呆然とした私の耳にはまたカシャリとシャッター音が聞こえた。
「入学試験受かってないのに、その高校の制服着てるんですか? 私頭おかしいやつじゃないですか」
「アハハッ、皆実やばいやつ認定されちゃうね、うける」
「うけねーわ」
「怖っ。はい、もう一枚」
勝手に入学は決められてるものだと思い込んでいた。
確認不足の私にも落ち度がある。
でも、でもさあ。
もう一度ため息を吐いた私を、五条先生が笑った。
「大丈夫。皆実可愛いから」
「説得力のなさ」
「アハハッ、まあ頑張ってよ」
そしてまた五条先生が私の頭を撫でた。
この手はやけに落ち着くから、嫌いだ。