第2章 流呪操術
「これ、皆実の制服だから」
「どうしよう、全然要領を得ないんですが」
「えぇ、皆実って意外とおバカ?」
どうしよう。めちゃめちゃイライラするんだけど私カルシウム足りてないのかな。
「まあ、そう怒らないでよ。怒ってもかわいい顔なの本当にすごいよね。写真撮っとこー」
カシャリとまた音がする。
もういいや、怒ったところでこの人が楽しいだけだ。
「私、高専に通うんですか?」
「うん。そっちのほうが監視しやすいからね」
「私、呪いを祓ったりとかできませんよ」
「溜めるしか能ないもんねー……ってウソウソ。怒んない怒んない」
五条先生のケラケラ笑いは止まらない。
なんでも与えられた代わりに、この人はこの性格でみんなに嫌われるんだろうなあ。
「今失礼なこと思ったでしょ?」
「失礼なこと言いまくってる人がそれ言いますか?」
「たしかに。……で、本題に戻すけど」
人をからかっていたかと思えばふと真面目なムードに切り替える。
オンオフの切り替えが上手すぎてこっちがついていけない。
「皆実には高専に通ってもらう。呪力がある以上、その基礎知識と制御方法は知っておくべきだ。特に皆実の場合、呪力の制御は必須。制御できれば怪我をして流れる血に呪力を含ませないことだって可能だよ」
何も考えてないみたいな顔してたくせに。
この人はやっぱり先生なんだ、って納得してしまった。
悔しいけど、この人の言う通りにしたら間違いない気がして。
そりゃあ、この制服を着るのは気後れするけど。
「分かりました」
「うん。物分かりがよくて助かるよ」
五条先生は私の頭を撫でる。
でも何かを思い出したらしく「あ」と声をあげた。
「一応学校だからさ、実践任務とかあるわけだけど。…… 皆実は呪力コントロールできるまで術式使うの禁止ね」
「……術式とか使えませんけど」
反論すると、五条先生は私の顔に自分の顔を近づけた。
反射的に距離を取ろうとしたけど、やっぱりそれは五条先生に阻止された。
私の頰を支えて、五条先生は自分のサングラスを外す。
綺麗な瞳には嘘つきな私の顔が映ってる。
「僕の眼、誤魔化せると思う?」
知らないよ、そんなこと。