第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
私は伏黒くんに手を引かれてテーブルに戻る。
伏黒くんに手を引いてもらってるあいだは誰からも声をかけられなかった。
テーブルに戻って一息ついた私を、野薔薇ちゃんが哀れむように見つめる。
「アンタ、トイレに行くたった数分のあいだに何回ナンパされてんの? そういう呪いにでもかかってんの?」
「いやぁー……」
私が半笑いで頭をかくと、虎杖くんが感心したように声を出す。
「俺もここまでモテるヤツ、はじめて見たなー。普通の学校通ってる時とかすごかったんじゃねぇの?」
虎杖くんは興味津々に聞いてくる。
別にこの話をそこまで広げる必要はないかなって思ったから、私は「全然」って否定したんだけど。
「全校男子生徒に告られてたって、五条先生がこのあいだ言ってたけど」
「それは本当にガセネタだよ」
五条先生が楽しそうに誇張した話を告げてるのが想像できた。
「でも似たようなレベルでモテてたんじゃねぇの? 初対面のときから思ってるけど、皆実すげぇかわいいもん」
そう告げてすぐに、虎杖くんが顔を青くする。
「イヤ、ちげぇよ? 釘崎も別にキレーな顔してっけど!」
「わざわざ言わなくても私が美人なことくらい分かってるわよ。けど、私でも皆実と張り合おうとは思わない」
野薔薇ちゃんは呆れるようにため息を吐く。
「初めて見た時に思ったもの。ビクビクしてるし見るからに弱そうだけど、顔だけはバカみたいに綺麗だから。『あー、顔だけで生きてきたんだろうな』って」
あの初対面のときの盛大なため息にはそんな意味があったんだ。
私が苦笑すると、野薔薇ちゃんが肩をすくめた。
「ま、予想通りに弱かったけど。……でも、弱いなりに自分の立場を理解して頭使って動いてたから、私は嫌いじゃないって思った」
野薔薇ちゃんはそう告げて「あ゛〜我ながらクッサ」と自分の言葉を取り払うように手を振った。
「でも普通の女子には好かれないでしょ、こんだけモテると」