第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
注文を終えて、一段落。
レストラン内にちょうどトイレがあるみたいだから、私は席を立った。
「あ、あの」
トイレに向かう途中で、知らない男子に声をかけられた。
たぶん同い年くらい。
無視しようかなって思ったけど、私の真正面に回り込んでくる。
「俺と連絡先交換しませんか?」
「……同居人の連絡先でよければ」
連絡も何も私スマホ持ってないし。
私が答えると、その男子は「同居人!?」って声をひっくり返した。
そして「やっぱりいいです」と逃げて行った。
これでやっとトイレに行ける、と思ったんだけど。
「ねね、あそこにいる男子ってキミの彼氏?」
別方向からやってきたまた別の男性に声をかけられた。
たぶん私より年上。
その人が指し示す方には、伏黒くんがいる。
(あ)
伏黒くんどころか、野薔薇ちゃんも虎杖くんも心配そうに私のことを見てる……というか、もうほぼ立ち上がってて。
「ハイ、そうです」
3人の手を煩わせないように、しっかり偽恋人作戦は続行した。
同期3人の視線を浴びながら、私はようやく女子トイレにたどり着く。
用を済ませて、女子トイレからテーブルに戻ろうとしたんだけど。
帰り道も帰り道で、邪魔が入った。
「お客様」
でも今度はさっきの2人と違って、男の店員さんだ。
何か落とし物でもしたかな、と思って首を傾げると、店員さんが少し頬を染めた。
「何かお困りごとはないですか? 不備がありましたら、いつでも声をかけてくださいね」
(めちゃくちゃ親切だなー。さすが夢の国)
「ありがとうございます」
「いえ、とんでもない。それにしてもカチューシャお似合いですね。どちらのショップで買いました?」
ん? この会話は必要なのか?
考えるために顎に手を当てようとしたけど、その手がグイッと引っ張られた。
「入口近くのショップですけど、何か?」
伏黒くんがそのまま腕を引っ張って、私を背後に隠した。
店員さんは伏黒くんの行動に特に萎縮することはなく、「いえいえ」と手を横に振った。
「あまりにもお似合いなので、興味本位で聞いてしまいました。不快にさせたなら申し訳ありません。それでは失礼します」
店員らしく、スマートな挨拶をして奥に消えていった。