第2章 流呪操術
視線を横に向けると、五条先生の顔が間近にあって。
思わず飛びのこうとしたけど、五条先生に腰を抱かれた。
「お、おかえりなさい……」
「うん、ただいま。ね、僕と暮らすのが何?」
「あはははは、幸せだなあって」
「うんうん、そうだよねー。そんな皆実にさらに幸せプレゼント。じゃっじゃーん」
そう言って五条先生は私の腰を抱いたまま私の身体ごと向きを変えた。
同時に体を解放される。
眼前には衣装を着たマネキン一体。
「これどうやって持ってきたんですか」
「ん? こう、脇に抱えて」
「変質者すぎません?」
ああまた五条先生の調子に乗せられてる。
冷静になれ、私。
冷静に、落ち着いて。
私はマネキンの頭から足先まで半目で見つめた。
黒基調で金色のボタンがついた学ランのような上衣。
でも襟元は白地のセーラー服みたいになっていて。
プリーツタイプのスカートは丈がやや短めで、腰元に白のベルトがついている。
脚元はニーハイソックスにショートブーツ。
見るからに……。
「コスプレ衣装か何かですか?」
「アハハッ、違うよ。これ、高専の制服」
ああ、五条先生は教師なんだった。
えと、東京都立呪術高等専門学校……だっけ。
にしてもやたら着る人を選びそうな制服だなあ。
「誰かに届けるんですか?」
「うん。届けにきた」
「ん?」
さっきからなんでこう話が噛み合わないんだろう。