第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
「でもそうねぇ……。皆実を見失う度にこうなってたら全然行動できないし」
「ご、ごめんね……」
「なんで謝んのよ。こういう楽しい空間で謝るのナシ。発していいのは笑い声とポジティブな言葉だけよ! ……まったくこれだからTDL初心者は」
「オマエも初心者だろ」
やれやれと首を横に振る野薔薇ちゃんに、虎杖くんが突っ込んだ。
そしたら野薔薇ちゃんが「アァン?」とまた顔に似合わないドスの効いた声を出す。
「なんだよ、虎杖。オメーも初心者だろうが」
「俺はばっちりリサーチしてきてんだよ!」
「私もしてきたわよ!」
この2人は本当に気が合うなあ。
そんなことを思ってると、野薔薇ちゃんがまた考えるような素振りをする。
「とりあえず皆実がナンパされないようにするためにはー……」
そう呟いて数秒後、何かを閃いたのか、野薔薇ちゃんがポンっと手を叩いた。
「虎杖か伏黒、どっちか皆実の手繋いで彼氏ヅラしとけ」
「「は?」」
虎杖くんと伏黒くんを指差して、野薔薇ちゃんが告げる。
「男いるって思わせとけば、さすがにナンパしてこないでしょ」
「あ、じゃあ俺、皆実の彼氏役したい!」
お遊戯会の役決めをするかのように、虎杖くんが挙手した。
その瞬間、なぜか野薔薇ちゃんが伏黒くんの顔を見上げる。
でも伏黒くんはいつもみたいに我関せずって顔で。
虎杖くんが私の横に並んだ。
「皆実、今日1日俺が彼氏な。よろしく!」
「う、うん?」
彼氏のフリでは? と突っ込もうとしたけど。
虎杖くんがあまりにも屈託なく笑うから言えなかった。
「じゃあ皆実、手貸し……あ゛」
虎杖くんが私に左手を差し出して。
瞬間的に、その左手を右手で叩き落とした。
え、どうして?