第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
「……虎杖くんが運動神経いいのは知ってたけど、めちゃくちゃ足速いんだね」
「まぁなー。短距離はわりと速ぇかな。50mは3秒ちょっとくらいだし」
「速すぎんだろ……」
平然と答える虎杖くんに、伏黒くんが頭を抱えた。
野薔薇ちゃんに至っては「車かよ」って突っ込んでため息ついてる。
「でもまあ……虎杖のおかげですぐに皆実が見つかったし、その俊足には感謝するけど。にしても、よく皆実の居場所が分かったわね。足速くたって、この人混みで簡単には見つけられないでしょ」
「あー、それな。コイツが皆実好きすぎて、皆実はココにいるってうるさくてよ」
虎杖くんが自分の頭を指す。
私と伏黒くんには何のことか分かったけど、野薔薇ちゃんは首を傾げた。
「コイツって誰よ」
「特級呪物」
伏黒くんが冷静に答えると、野薔薇ちゃんが「げ」と顔を顰めた。
「なんで呪物に好かれてんのよ、アンタ」
「それは私にも分からないんだけど……」
私は遠い目をするけど、虎杖くんはそれを気にせず話を続ける。
「俺が考えたところで皆実の居場所わかんねぇし、言うこと聞いてコッチに来たらホントに皆実がいて。そんでナンパ男に連れて行かれそうになってた」
虎杖くんがそう告げて、指についてたケチャップをペロッと舐める。
虎杖くんの解説を聞くや否や、なぜか伏黒くんが静かに別方向へ歩き出した。
……どこへ向かうの、伏黒くん。
「虎杖。ソイツら、どこ行った?」
「伏黒ー、夢の国で事件起こそうとすんなー」
闇雲に歩き出した伏黒くんの肩を、野薔薇ちゃんが掴んで止めた。