第1章 プロローグ
【記録――2018年5月
群馬県立朝隈高等学校
新校舎3階】
頭から顔に伝う熱い液体。
私の汚い血の匂い。
階段から落ちた拍子にこめかみのあたりが切れて血が出たんだ。
「綾瀬、大丈夫か!?」
《やっべぇ、今なら綾瀬に触り放題》
心配の声と同時に、全然違う下心が全身に流れて身体を刺す。
「皆実ちゃん、血でてる!」
《最悪、血触っちゃった……》
「誰か、先生呼んできて!」
《色目ばっか使ってるから罰が当たったんじゃん。ざまあみろ》
痛い、痛い。
ズキズキと身体が突き刺されたみたいに痛い。
階段から落ちて打った痛みとはまた別の痛みが全身を巡る。
でもそんなのどうだっていい。
「……げて」
早くみんな、ここからいなくなって。
遠くへ行って。
「逃げて、みんな逃げて!」
もう手遅れだって頭は冷静に理解してる。
だってもう……。
《お゛い゛し゛そ゛う゛》
【校舎内に、3級呪霊が出現
女子生徒1名の血液摂取後
非術師の学生及び教師が呪霊を視認
校内にいた非術師は全員死亡
派遣された3級呪術師2名死亡
不測の事態のため
呪霊等級を3級から特級に変更
特級呪術師が派遣された】