第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
「ゆ、め……」
懐かしい夢を、見ていた。
夢だけど、それは過去の現実。
私の中で美化された、確かな思い出。
(……久しぶりに見た)
かつては毎日見ていたあの人の夢。
夢、というより、眠ることのできなかった私が縋った過去の思い出。
どんな夜も呪いの声にうなされて、熟睡なんてできなくて。
そんなときは、あの人のことを考えると身体の痛みを忘れられた。
だから毎日、毎日、夢を自分で描いてた。
でもいつからか、自分の都合のいい夢を、描くことがなくなっていた。
(いつから……)
考えなくても、答えは分かってた。
「あ! 皆実、起きたー?」
五条先生に出会ってから。
私は、あの人の夢を描かなくなっていた。
「おはようございます」
ベッドの上、身体を起こして五条先生に挨拶をする。
いつもならまだ、五条先生もベッドに寝転んでるのに。
今日は五条先生の行動が早い。サングラスをかけた五条先生は寝間着じゃなくて、普段着。
「任務だったんですか?」
五条先生はたまに、夜中に電話がかかってきて家を抜け出すことがある。
任務で呼び出されてるみたいだけど、今もそうだったのかなと思って聞いてみた。
「イヤイヤ、ばっちり私用。頼んでたモノが手に入ったっていうから五条家に取りに行ってきた」
出た、五条家。
また高そうな何かを見せられるんだろうか。
このあいだもらった紅鞘の小刀はいったいいくらするんだろう。
考えただけでも怖かった。
「はい、コレ」
五条先生が高級感漂う紙袋を私に差し出す。
「え?」
「皆実にプレゼント。ほら、開けて開けて」
促されるまま、私は紙袋の中身を開封する。
中から出てきたのは……。