第17章 大波乱⭐︎一年生親睦会
『……日に日に綺麗になるね。皆実は』
私にキスをしながら、その人は呟いた。
こんな邪悪な毒を身体に仕込んだ私が、『綺麗』なわけないのに。
その人から与えられる言葉だから、嬉しかった。
『皆実に恋人ができたら、怒られてしまうかな』
恋人なんて、いらない。
私の心を無視して、イヤらしいことばっかり考えるヤツらなんて大嫌い。
私は、あなたがいればそれでよかった。
『できないですよ。――さんよりかっこいい人、知りませんから』
『私よりかっこいい男なんて五万といるよ』
『いません』
即答した私を、その人は笑った。
『……彼が聞いたら、笑うだろうな』
『彼?』
私が問い返すと、その人は少しだけ悲しそうな顔をした。
『……顔も強さも、全部最強の男さ』
そんな人いるわけないのに。
どうせまた、謙遜してるんだ。
『――さんの友達?』
『ああ。……友達、だった』
その人は、また辛そうな顔をした。
どうしてそんな顔をするのか、私には分からなくて。
『今は違うんですか?』
『どうだろうね。……私にとっては、今でも親友だけど』
親友――その響きは、私には縁遠くて。
何も反応できない私に、その人は笑いかけてくれた。
その笑顔が、大好きで。
『皆実にもできるよ。できる世界を私が作るから』
私の頰を優しく撫でる、その手も。
触れる唇も、全部。
『待ってて』
その人のくれるすべてが、大好きだった。