第16章 鉄骨娘
「皆実」
少年の言葉は私の心に刺さったのに。
それが全然痛くなくて。
むしろ身体がぽかぽかになって。
「……頑張ったね」
追い討ちかけるみたいに、五条先生が私の頭を撫でたから。
私は五条先生の胸に顔を埋めた。
五条先生の服を濡らしてしまって申し訳ないのに。
感情が抑えきれなくて。
「……綾瀬」
弱虫な私を、伏黒くんが静かに見てる。
早く顔を上げたいのに、それができない。
そんな私を見て、伏黒くんが小さく息を吐いた。
「五条先生」
「何、恵の胸貸す?」
「違います。というか、貸す気ないくせに聞かないでください」
呆れたような、伏黒くんの声。
でも次に紡いだ声は優しさを帯びてて。
「……綾瀬はやっぱり、普通の女子ですよ」
それがどういう意味なのか、私には分からなかったけど。
「普通よりかわいいでしょ」
「そういう意味じゃないです」
「恵も素直じゃないねぇ」
「……マジで殴りたい」
五条先生と伏黒くんがいつもみたいな言い合いをするから。
そんな『いつも通り』に安心してしまって。
また少し、私の感情が揺れた。