第16章 鉄骨娘
釘崎さんはそのまま虎杖くんが抱きかかえてる子どもの頭を撫でて、虎杖くんに声をかける。
「……そういう意味ではアンタにも感謝してる。……私が死んでも私だけ生き残っても明るい未来はなかったわ。ありがと」
笑顔の釘崎さんはとっても可愛くて、虎杖くんがそんな釘崎さんを見て頰を赤くしてた。
(赤くならない方がおかしいよね)
見てるだけなのに私までドキッとしたもん。
でも釘崎さんはすぐにいつもの元気な釘崎さんに戻って、両手をバーンと広げた。
「ハイ! お礼言ったからチャラー! 貸し借りなーし!!」
「……何だコイツ」
そんなやり取りが面白くて、クスクス笑ってたら、私の目の前に手が差し出された。
顔を上げたら、釘崎さんが私の前に立ってた。
「何、他人事みたいに笑ってんのよ。アンタにも言ってんのよ?」
「え?」
私が首を傾げると、釘崎さんは「鈍いわね」とため息を吐いた。
「アンタがいなかったら、私は選択を迷ってあの子も、自分自身も助けられなかったかもしれない」
私の手を握って、引き上げてくれる。
釘崎さんの呪力は優しく私の身体を弾いた。
「ありがと、皆実」
力の入らない私の身体を支えて、私の名前を呼んでくれた。
「釘崎、さん」
「何よその他人行儀。名前で呼ばれたら名前で呼び返す!」
釘崎さんが初対面の時みたいに腰に手を当てて堂々と言ってくる。
最初は怖かったその態度が、今はただかわいく思えて。
「ありがとう……野薔薇ちゃん」
握り返した手は、五条先生と同じくらい温かった。