第16章 鉄骨娘
「皆実に術式を使うことを覚えさせたくない」
「呪術師にしておいて?」
「呪術師だからって絶対に術式を使う必要はないだろ。皆実の場合、呪霊の攻撃が効かないアドバンテージがある。呪力をうまくコントロールすれば、どんなクズ板も特級呪具に変えて戦えるようになるはずだ」
だから真希と体術の訓練をさせている。
けれど僕の矛盾だらけの答えは、皆実に術式を使わせたくない理由にはならなくて。
恵はやっぱり怪訝な顔をした。
まあ、実際。
皆実はバカだから術式の解釈なんて広げないだろうし。きっと呪霊の動きを止めるくらいがやっとなんだろうけど。
でも怖いんだよ。
「皆実の術式には諸刃の剣が混ざってる」
僕の眼に映る、皆実の術式情報には……全く使いどころのない、強力な式が存在していた。
皆実がその存在に気づいているかどうかはまた別問題だけど。
僕の答えがそれ以上広がらないと悟って、恵は黙った。
そろそろ、タイムリミットだけど。
そう思った瞬間。
上の階から、呪霊が出てきた。
「お」
「祓います」
恵が立ち上がって、手を合わせる。
(あぁ……この術式は野薔薇の、かな)
「待って」
恵を制して、時を待つ。
数秒も経たずに、野薔薇の術式が発動して、上空の呪霊が消失した。
(うん、上出来)
「いいね。ちゃんとイカれてた」
笑った僕の隣で、恵が手を合わせたまま式神も出せずにムッとしていた。