第16章 鉄骨娘
※皆実視点
階段を駆け上がる。
このフロアに、さっきの呪霊がいる。
呪力の気配を追ってたどり着いた場所。
マネキンだらけの部屋の中に、釘崎さんの姿があった。
「く、釘崎さん!」
私が名前を呼ぶと、釘崎さんは静かに私の方を振り返る。
その目の前には、崩れたマネキンと、怯えた様子の男の子。
「アンタ、何してんの。下を見回れって……」
《怖い、助けて》
その少年から溢れた負の感情が私を刺す。
私が痛みに顔を歪めて膝をついたから、釘崎さんが怪訝な顔をした。
「アンタ、顔色悪いよ。もうここは終わったから、外に……」
「ダメ。……まだ、いるから」
私は釘崎さんの後ろを指す。
そこには怯えた少年がいるだけ。でもその壁の中に……。
「は? アンタ、何言って……」
「まって! おいていかないで!」
涙を流してこちらに手を伸ばす、少年の背後にさっきの毛むくじゃらの呪霊が現れた。
釘崎さんが慌ててトンカチを構えるけど、遅い。
呪霊が先に、少年の頭を捕らえて首に爪をかけた。
(私が逃したせいだ)
少年を人質にとられた。
でもすぐに殺す様子を見せない。
何か取引をするつもりなのか。
知恵のある呪霊……何をしでかすか分からない。
焦るな、冷静になれ。
自分にそう言い聞かせていたら、釘崎さんが小さく舌打ちをした。