第16章 鉄骨娘
「恵はさ、皆実がなんで秘匿死刑になったか……その理由をちゃんと知ってる?」
「通ってた高校に現れた呪霊に血を与えて、高校にいた非呪術師全員を鏖殺した呪詛師の疑い……でしたっけ」
「そう」
「でも、綾瀬が故意的に血を与えたわけじゃないでしょ」
「うん。ケガしてたからたぶん不慮の事故が招いた凄惨な事件」
「……それで綾瀬がどうイカれてるんですか」
恵は答えを急いてる。
皆実のことになると本当に『待て』ができなくなるね、恵は。
「仮にも1ヶ月は顔を合わせてた高校の仲間が自分のせいで死んだのに。皆実は申し訳なさはあっても悲しみはしないんだよ」
僕が答えると、恵は黙った。
僕の家に来てから、皆実が前の学校の話をしたのは一回だけ。
『前の学校でもよく言われてたんですよ。……《綾瀬皆実は言うほどかわいくない》って』
自分のせいで死んだ誰かの、呪いの言葉だけを淡々と呟いた。
そこには、何の感情もこもってはいなかった。
「普通は高校に顔を出して、花でも置いていったり、そこで泣いてみたりするものだよ。……恵の知ってる皆実はそういうことをしそうなくらい感性豊かでしょ」
そう、恵の前にいる皆実は感情が豊かだ。
恵のことを心配したり、素直に痛みを訴えたり。
でもそれはあくまで恵の前だからだ。