第2章 流呪操術
祖父母は私が帰ってこないことを心配したりはしない。
「皆実はね、あの高校で起きた事件で死んだことになってる。君が一緒に住んでたおじいちゃんとおばあちゃんにもそれは伝わってるよ」
五条先生は口角を上げたまま。
「おじいちゃんとおばあちゃんの反応知りたい?」
ほんと性格悪いなあ、この人。
私が首を横に振ると五条先生は「だよね」と軽やかに答えた。
「ささっ、皆実。僕たちの新生活、はじめての朝ごはんだよー。食べよう、食べよう」
いろいろ文句はあるけど、言える立場じゃない。
私はため息まじりに、手を合わせた。
いただきます、と声にして五条先生の手料理を口にする。
「……っ」
思わず固まってしまった私を見て、五条先生はまたニヤリと笑う。
サングラスの隙間から見えた瞳はやっぱり綺麗だった。
「美味しいでしょ」
どうせまた笑われるから、頷かなかった。