第2章 流呪操術
食卓には本当に2人分の食事が用意されていた。
香ばしく焼かれた鮭がのった皿にはすりおろされた大根おろしが綺麗に山型に盛られ、その隣には卵焼きとほうれん草のおひたし、炊き立ての白米と程よく湯気のたつ味噌汁。
白髪、サングラスの男性が作ったと思うと違和感しかない。
この人「僕パンしか食べなーい」とか言いそうな見た目じゃん?
「料理、できるんですね」
「うん、僕なんでもできるから」
すっごい自信満々に言ってのけた。
たしかに整いすぎてるくらいに整った顔と、ありえないくらいの強さだけでも自信に繋がるのに。
生活力もあるとなれば神様に余程愛されてるんだろうなとしか思えない。
「私の分まで用意してくれてありがとうございます」
「うん。明日からは皆実が2人分作ってね?」
ん? 明日? 2人分?
「アハハッ、すっごいマヌケ顔なのにかわいいのうける。記念に撮っとこー」
パシャパシャと五条先生はスマホのカメラで私の顔を撮る。
人を苛立たせる笑い声も昨日と変わらず。
それよりなんて言った? この人。
「私、家に戻るんですよね?」
一応、私は祖父母の家に住んでいる。
住んでいる、といっても部屋を一室借りているって感じの関係だけど。
「戻るわけないじゃーん。君、秘匿死刑が決定してるんだよ? 僕の監視下で執行猶予ついてるだけで。家帰ったら監視下じゃなくなっちゃうでしょ」
「でもそしたらあの人たちが……」
言いかけて、やめた。