第16章 鉄骨娘
僕がそう告げると、恵が首を傾げた。
「どれだけ動けるかってことですか」
半分、正解。
でも恵はきっと100点の正解を導けないだろうから。今は暇だし、暇つぶし程度に解説してあげることにした。
「うーん。何て言えばいいかな。試したいのは実力というより、呪術師としての適正のほう」
実力はほぼ才能。
でも呪術師の『適正』っていう素質は実力以上に重要だと僕は思う。
「悠仁と皆実はさ、2人してイカれてんだよね」
僕が告げると、恵が静かに僕のことを見た。
「悠仁なんか特にそう。異形とはいえ生き物の形をした呪いを……自分を殺そうとしてくる呪いを、一切の躊躇なく殺りに行く。君みたいに昔から呪いに触れてきたわけじゃない。普通の高校生活を送っていた男の子がだ」
悠仁は普通じゃない。
そもそもあの両面宿儺を身体に取り込んで、自我を保っている時点で化け物だ。
「才能があってもこの嫌悪と恐怖に打ち勝てず、挫折した呪術師を恵も見たことあるでしょ」
恵は何も言わない。
呪術師の残酷な現実を、彼は知っている。
でも恵は、ある一点の僕の発言に異を唱えた。