第16章 鉄骨娘
※五条視点
廃墟を眺める僕の横で恵がそわそわしてる。
たぶん、そろそろ痺れを切らす頃合い。
「やっぱ俺も行きますよ」
ほらね。
僕の予想通りに腰を浮かした恵に、僕はストップをかける。
「無理しないの。病み上がりなんだから」
「でも虎杖と綾瀬は要監視でしょ。虎杖はいつ宿儺に入れ替わってもおかしくないし、綾瀬はぶっ倒れるかもしれない」
恵の口から今日だけで何回『綾瀬』って単語が出てきただろう。
硝子の反転術式でも皆実のことしか考えられない頭は治らなかったか。
でもまあ、恵の言いたいことも分からないわけじゃない。
「まぁね。その時はその時で対処するだけ。……僕もちゃんと考えてるよ」
もし悠仁が宿儺に代わっても、皆実なら宿儺に殺されることはない。
悠仁の監視に関して、皆実よりふさわしい人間はいない。
「悠仁と皆実の実力は知ってる。だからここの呪霊のレベルと呪力量なら2人は大丈夫って確信のある場所を選んだつもり」
悠仁は学長面談のときにいい動きするのが分かったし。皆実も朝呪力を抜いてるから、この程度の呪いじゃキャパオーバーにはならない。
そういう絶好の条件下で、僕はもう1人の一年を見定めたい。
「……今回試されてるのは野薔薇の方だよ」