第16章 鉄骨娘
「それから皆実。オマエも2人と一緒に行ってきて」
「え」
五条先生の命令に私はポカンと口を開けた。
すぐに言葉を返せなかった私の代わりに、伏黒くんが口を開く。
「綾瀬は呪霊祓えないから行く意味ないじゃないですか」
「あるよ。もし、中の呪霊が2人の実力に対して強すぎると判断したら、即座に僕たちに報告する役割」
「俺がしますよ」
「恵が行くと、2人の実力測る前に恵が払っちゃうでしょ。皆実なら呪霊の攻撃も効かないし、今日は呪力調整済みだから、ある程度呪力吸っても問題ない。……だろ? 皆実」
五条先生が私に問いかける。
少しでも役に立てるなら、そうしたい。
頷いた私に、五条先生が虎杖くんに渡したのとは別の、布に巻かれた物を渡してきた。
布を解くと、紅鞘に収められた小刀が現れる。
「護身用に持っていきな。五条家にあったやつ。呪具じゃないけど、相当いい刀らしいから、皆実がバカみたいに呪力込めない限り壊れないと思う」
五条家……。
その由緒正しそうなフレーズに、やっぱり五条先生はいいとこの坊ちゃんなんだなって思った。
私と虎杖くん、そして釘崎さん。
この3人で廃墟に足を進める。
「あー、それから」
五条先生が虎杖くんを呼び止めた。
私も虎杖くんを待って足を止める。
「宿儺は出しちゃ駄目だよ。アレを使えばその辺の呪いなんて瞬殺だけど、近くの人間も巻き込まれる」
そう告げて、五条先生が今度は私のほうに顔を向けた。
「皆実も。術式は使うなよ?」
また、か。
五条先生は私に術式を使わせたがらない。
入学面談のときに一度使ったきり、あれ以降は全然使ってない。
そもそも呪霊を祓えない術式だから、使い所があんまりないんだけど。
たぶん「無駄なことはするな」っていう意味なんだろうな。
五条先生との会話が終わると、釘崎さんが私たちを連れて廃墟の中に入って行った。