第16章 鉄骨娘
「飲み込んだぁ!? 特級呪物をぉ!? きっしょ! ありえない! 衛生観念キモすぎ!」
釘崎さんが当然の反応を返してくれた。
でも虎杖くんはその反応が気に入らなかったみたいで。
「んだと?」
「これは同感」
伏黒くんも静かに賛同したから、救いを求めて虎杖くんが私のことを見てきた。
「皆実、コイツらひでぇんだけど!」
「あはは」
笑うしかない。
ごめんね、虎杖くん。でもあの指を飲み込むのは普通じゃないと思う。
でもまあ、私の身体もろくでもない呪いがたくさん棲みついてるから。虎杖くんのことをどうこう言えないんだよね。
「飲み込んだのはびっくりしたけど……でも特級呪物を取り込めるなんてすごいよ。虎杖くんにしかできないことだから」
「皆実ーーー! やっぱいいヤツー!」
虎杖くんが両手を広げて私に抱きつこうとした瞬間――。
パンッと五条先生が手を鳴らした。
「ハイ、そこの秘匿死刑コンビもこっちおいでー」
悪意たっぷりのネーミングで五条先生が私と虎杖くんを手招きする。
虎杖くんはブーッと唇を尖らせながら、五条先生のほうへ歩み寄った。
私と虎杖くん、そして伏黒くんと釘崎さんの4人が五条先生の前にそろうと、五条先生はこの廃墟に来た理由を話し始めた。
「君達がどこまでできるか知りたい。ま、実地試験みたいなもんだね。野薔薇、悠仁。2人で建物内の呪いを祓ってくれ」
「げ」
五条先生が告げると、釘崎さんがあからさまに嫌そうな顔をした。
対する虎杖くんは釘崎さんの様子など気にも留めずに、首を傾げる。
「あれ? でも呪いは呪いでしか祓えないんだろ? 俺呪術なんて使えねぇよ」
「君はもう半分呪いみたいなもんだから。体には呪力が流れているよ。でもま、呪力の制御は一朝一夕じゃいかないから、これを使いな」
五条先生が虎杖くんに布でグルグル巻きにされた物を虎杖くんの手に乗せた。
虎杖くんがその布を解くと、中から小刀が現れた。
「おぉ」
「呪具『屠坐魔』。呪力の篭もった武器さ。これなら呪いにも効く」
虎杖くんはキラキラした目で小刀をあらゆる角度から見てる。
そんな虎杖くんの様子を他人事のように見てた私に、五条先生が視線を向けた。