第16章 鉄骨娘
「いますね、呪い」
目の前の廃墟を見上げ、伏黒くんが冷静に呟いた。
名所に疎い私でも、ここが虎杖くんと釘崎さんが考えてる『六本木』じゃないと分かる。
というかせめて、口にしたなら六本木に連れて行こうよ、五条先生。
(ほんと、ここどこ。……ていうか)
廃墟に溜まった恐怖の声がうるさい。
少しだけ身体が刺された気がして、体を摩った。
でも、私の気を紛らわしてくれるみたいに虎杖くんと釘崎さんが怒鳴り叫んでる。
「嘘つきーー!! 六本木ですらねー!!」
「地方民を弄びやがって!」
2人が騒いでくれてるおかげで身体の中を流れるうるさい声が緩和される。
心の中で2人に感謝して、私は廃墟を見上げた。
(……呪霊、何匹かいるなぁ)
ゴクリ、と唾を飲んだ私の隣に五条先生が立った。
「でかい霊園があってさ、廃ビルとのダブルパンチで呪いが発生したってわけ」
五条先生が話を切り替える。
釘崎さんはまだ文句言ってるけど、虎杖くんは五条先生の切り替えに即順応した。
「やっぱ墓とかって出やすいの?」
「墓地そのものじゃなくて、墓地=怖いって思う人間の心の問題なんだよ」
「あー学校とかも似た理由だったな」
伏黒くんの説明を聞いて、虎杖くんが納得してると、釘崎さんがありえないって顔をした。
「ちょっと待って。コイツそんなこと知らないの?」
私は体質が体質だから、なんとなくそれを理解してただけで。
虎杖くんは最近まで呪いも見えないただの一般人だったから、知らないのもしょうがないんだけど。
釘崎さんはその事情を知らない。
だから、虎杖くんが気まずそうに「実は……」と切り出した。