第16章 鉄骨娘
「TDL、TDL行きたい!」
「バッカ、TDLは千葉だろ!」
「……TDLって何?」
釘崎さんと虎杖くんが騒いでるから、伏黒くんに聞いてみた。
そしたら2人に聞こえてたみたいで、可哀想なモノを見るような目で見られた。
「アミューズメントパーク。子どもが夢を投影しそうなコンセプトを遊園地に融合させた感じの施設」
伏黒くんが丁寧に教えてくれた。
納得する私に、釘崎さんが「そんな堅苦しい場所じゃねーよ!」って怒ってた。
そして話の通じない私と伏黒くんは放って、虎杖くんと釘崎さんは目的地争いを続行する。
「中華街にしよ、先生!」
「中華街だって横浜だろ!」
「横浜は東京だろ!」
「……神奈川だよ、虎杖くん」
思わず虎杖くんに突っ込むけど、たぶん2人にとってはそんなこともたいした問題じゃないんだろうな。
「綾瀬は? どっか行きたいところないの?」
2人の様子を眺めるだけの私に、伏黒くんが尋ねてくる。
「うーん。あんまり名所とか詳しくないんだよね」
「……そっか」
「伏黒くんは?」
「俺も同じようなもん」
「じゃあ、一緒だね」
伏黒くんに笑いかけると、伏黒くんが私から視線を逸らした。
「……本当、オマエはたち悪い」
「え……」
また伏黒くんを不快にさせてしまった!?
慌てて謝ろうとしたけど、伏黒くんが「違う、そうじゃない」って私を止めた。
そんなことをしてたら、目の前の賑やかさがスッと静かになった。
視線を五条先生たちに移すと。
五条先生の目の前に虎杖くんと釘崎さんが跪いてる。
「それでは行き先を発表します」
(重大任務でも発表するみたい)
内容は全然ふざけてるのに。
虎杖くんと釘崎さんが真剣だから、面白かった。
「六本木」
キリッと答えた五条先生に、また嫌な予感がしたんだけど。
嬉しそうな虎杖くんと釘崎さんには『私のよく当たる予感』は伝えられなかった。