第2章 流呪操術
知らない誰かの恨言が、うるさくて、うるさくて。
カーンカーンカーンッ!
いや、これは異常にうるさいわ。
もはや声でもないし、何この甲高い音。
ゆっくりと目を開ける。
差し込む光が眩しくて反射的に目を細めた。
視界の先にはフライパンとフライ返し……なぜ?
「寝坊助な皆実ちゃん。おっはよーっ!」
フライパンとフライ返しが退いて声の主がヌッと顔を出す。
目を隠した五条先生がニッと口角をあげていた。
昨日と違うのは目隠しが黒布じゃなくてサングラスなとこ。
いや、部屋でサングラスって変だよ。
たしかに朝日が眩しいけど。
オシャレサングラスだとしたらちょっと引くよ。
「……おはようございます」
そう口にして、違和感が走る。
……私、寝てた? 気絶じゃなく?
「どう? 僕の快眠ピロー、気持ちよかったでしょー? いびきガーガーかいてたよ」
「私、寝てました?」
「うん。皆実のいびきでね、もう家が揺れに揺れて」
「寝てたんだ……」
「全然つっこまないじゃん、うける」
本当うるさいな。
こんなうるさい人がそばにいる時点でまず眠れるわけないのに。
眠ったんだ……私。
「まあいいや。とりあえずご飯食べようか。五条先生特製・ドキドキはじめてのブレックファー」
「トイレ借りますねー」
「スルーしすぎじゃない??」
朝から漫才するわけないでしょうに。
本当何だそのハイテンション。わざとかな。
昨日はもう少し真面目なこと言って……。
『初めてじゃないだろ?』
うん、思い出すのはやめとこう。