第16章 鉄骨娘
「皆実、クレープどれにする?」
2018の奇抜なサングラスをかけた虎杖くんが私に問いかける。
その左手にはすでにさっき買ったポップコーンが握られてた。
「虎杖くんも甘党?」
「んー、甘いのは好きだけど甘党ってほどじゃねぇな」
「ほどじゃないのに、甘いもの買いすぎだろ。見てて胸焼けする」
虎杖くんが食べてるポップコーンを見て、伏黒くんがげっそりした顔してる。それでもついてきてくれるから偉いと思う。
「悠仁、それちょーだい」
「ん? いいよ、はい」
五条先生が虎杖くんのポップコーンを鷲掴んでそのまま口に放り込む。食べ方が大胆すぎた。
「虎杖くん、ここのクレープって有名なの?」
今私たちはクレープを食べるために行列に並んでる。
クレープなんてどこでも食べれそう。っていうか、昨日も五条先生と帰り道に食べたっけ。尋問を逃れるためだったけど。
私が問いかけると、虎杖くんがフフンと笑った。
「竹下通りのクレープ。原宿来たらこれ食べろって書いてた」
虎杖くんがそう告げて、私は目を見張った。
『これクレープですか? おいしそうですね』
『竹下通りのクレープ……私は食べていないんだけどね。菜々子と美々子がおいしそうに食べていたよ』
あの人がいなくなる少し前に、そんなことを言っていた。
あの人が見せてくれた写真には、綺麗にデコレーションされたクレープをもった女子2人と、その間に挟まれたあの人が写ってた。
『……? 皆実も食べたかったかい? お土産にすればよかったね』
『そうじゃなくって、その……。私も……――さんと、一緒にお出かけしたりご飯食べたりしたいです』
ワガママを言う私に、あの人は困った顔をした。
『もうすぐ、毎日一緒にいられるようになるさ』
霞んだ私の記憶。
あの人の笑った顔だけは、鮮明だった。
「皆実? おーい、皆実」
虎杖くんが私の顔の前で手を振ってる。
ハッとした私を伏黒くんも心配そうに見てた。
「やっぱり体調悪いんじゃないのか?」
「違う違う。前に、その……知り合い、が……ここのクレープの写真を見せてくれたなぁって。その人は食べてないみたいなんだけど」
苦笑した私を五条先生が見下ろしてた。