第16章 鉄骨娘
パタン
私の背中に押されてその扉が閉まった。
目の前には五条先生の胸、少し視線を下げれば鍛えられた腹筋が見えた。
(……せめて服着てくれよ)
目のやり場に困って、私は顔を上げた。
五条先生の濡れた髪から雫が落ちて、私の顔に落ちる。
頭にタオルを被せたまま、五条先生が私を見下ろしていた。
なんかデジャヴ。
昨日の夜も玄関でこの状態だった気がする。
「……さっさと髪乾かして服着ないと風邪引きますよ」
「そうなんだけどさ。カレーが辛口ってどういうこと?」
「カレーが辛いってことです。安心してください、今から五条先生の分は甘くなるまで砂糖入れるので」
「何そのヤバそうなカレー。僕朝から何食べさせられんの?」
「カレーです」
私がドヤ顔で答えると、五条先生はため息を吐いた。
「せめて中辛にしなよ。なんで辛口」
「カレーは辛いほうがいいじゃないですか」
「マジで味の好み合わないな」
予想的中、五条先生は甘口派だった。
でも私は辛口が食べたかったから謝る気はない。
五条先生のカレーには砂糖を入れればいいだけの話だ。
だから早く、そのあたりの処理をしに戻りたいんだけど。
「てゆーか、皆実は学習しないよね」
五条先生が耳元でそう囁いて、私に倒れ込むように私の肩に顔を乗せる。
五条先生の長い手が伸びて、私の太ももに触れた。