第13章 自分のために③
(アイツ、ちゃんと五条先生と仲直りできたんだろうか)
綾瀬もバカだ。
あんな気分屋の軽薄が服を着て歩いてるような人を頼るとか。
そんなことを考えてたら、だんだん綾瀬の趣味の悪さにムカついてきて。
ため息を吐いて、俺はまたベッドに横になる。
布団を頭までかぶって、目を閉じた……けど、部屋の扉が勝手に開いた。マジでなんでだよ。
「恵、おっはよー! 様子見に来てあげたけど、生きてるー?」
寝よう。
俺はそう決めて、五条先生に反応しない。
「え? 寝てんの? てっきり硝子の言いつけ破って、動き回ってると思ったのに」
行動パターンを把握されていることすら不快だ。
寝てるんだから、さっさと出ていけばいいのに、五条先生はわざわざベッドサイドまでやってきた。
「恵」
だから寝てるんだって。
「皆実は元気だよ」
五条先生はそれだけ告げると、部屋を出ていく。
その足はどうせまた、綾瀬のところへ向かうんだ。
「……元気にした、の間違いだろ」
わざわざ言われなくても分かった。
五条先生から、綾瀬の香りがしたから。
呪いを身体に宿してるなんて嘘みたいに、ふんわりと甘い花の香り。
(……ムカつく)
ガキみたいな感情とともに、俺はまた眠りに堕ちた。