第11章 自分のために
五条先生が私を連れて、虎杖くんに寮の中を案内してる。
寮の中は静かだ。
そういえば今日からしばらく2年生みんな遠征任務だったっけ。
急遽宮城に行くことになっちゃったから、真希先輩の稽古すっぽかしたの謝りたかったのに。
(あとで五条先生にスマホ借りて電話しよ)
パンダ先輩と狗巻先輩ともお話ししたいし。
(でもその前に……)
私は五条先生を呼び止めた。
「伏黒くんの部屋ってどこですか?」
「恵? そこだよ。ちなみに悠仁の部屋があっち」
「私、伏黒くんに会ってきていいですか?」
私が尋ねると、五条先生は黙った。
なぜか訪れた沈黙。
「え、何? この空気」
私の気持ちを虎杖くんが代弁してくれた。
私また五条先生を怒らせた?
でも五条先生は小さく息を吐いて、肩をすくめるだけだった。
「……あんまり恵をいじめるなよ?」
「五条先生じゃあるまいし」
私が伏黒くんをいじめるとか不可能でしょ。
それを五条先生も分かってるはずなのに。
どういう意味だろう。
「ま、僕はいいけど。じゃあ、悠仁はこっちね」
五条先生は虎杖くんを連れて、少し先の部屋に向かう。
私は1人残って、目の前の部屋の扉をノックした。
でも返事がなくて。
(やっぱり寝てるのかな)
だとしたら、入るのはやめておこう。
そう思って踵を返そうとしたけど。
なんとなく、顔だけでも見たくて。
もう一度、少し大きめのノックをした。
「……失礼します」
伏黒くんの部屋の扉をゆっくり開ける。
奥に見えたベッドに、人影。
ぐっすり眠ってる伏黒くんがいた。
反転術式、っていうやつで治療されたんだろう。
昨日ぐるぐる巻きにされてた頭の包帯も顔の絆創膏やガーゼもなくなってた。
「元気になって、よかった」
五条先生と仲直りした報告は後ででいいや。
そう思って、部屋を出て行こうとしたんだけど。
伏黒くんの腕が私の手に伸びて。
「きゃっ!」
そのまま布団の中に引き摺り込まれた。