第11章 自分のために
伏黒くんの腕が私の背中に絡まる。
身体をぐいっと抱き寄せられて、私の胸に伏黒くんの顔が擦り寄った。
「綾瀬……」
「伏黒くん!?」
思わず伏黒くんの身体を叩こうとして。
聞こえてきた寝息に手が止まった。
(……寝てる? 今の……寝言? なんで、私の名前……)
夢の中に私がいる? 何の夢?
夢の中でも私、伏黒くんに迷惑かけてんのかな。
それも申し訳ないのに現実はさらに申し訳ないことになってる。
起きてる伏黒くんがこんなことするわけないし、そもそもしたくないと思うし。
きっと、起こしたほうがいいんだと思う。
(目覚めたら私の胸に顔埋めてたなんて……最悪だよね)
でも今起こしたら、胸に顔埋めた状態で目を覚ましちゃうし。
だからってこのままってのは……もっと怒りそうな気がする。
葛藤の末、
私は伏黒くんの肩を優しく叩いた。