第11章 自分のために
「あ、皆実ー! こっちこっち!」
待ち合わせ場所の駅前で、私の姿を見つけた虎杖くんが大きく手を振りながら私の名を呼んだ。
私も虎杖くんに手を振り返そうとしたんだけど、五条先生が私の手をガシッと握った。
「オイ、……オイオイオイ、悠仁ィ!」
「恥ずかしいから大声出さないでほしいんですが」
懇願してみたが、五条先生は完全無視だ。
依然、うるさい。
「なんで皆実が先なの! まず僕に挨拶でしょ!」
「あ、五条先生。ごめん、今気づいた」
「イヤイヤイヤイヤ、こんな街中で目隠ししてるの僕くらいよ? 真っ先に気づくでしょ」
ねちっこい五条先生が出てきてしまった。
絡み方が雑すぎてやばい。
虎杖くんは「そう言われても……」って困り顔で頰をかいてる。気持ちは分かる。
「さっきそこ歩いてた人があっちに変わった制服着ためちゃくちゃかわいい子がいたって騒いでて。皆実なんだろうなって思って、来るの待ってたから」
やっぱり変わった制服だよねぇ。
だから私服で着たかったんだけど。
私は私服持ってないし。五条先生はこんな時に限って服貸してくれないっていうし。
「クッソ。僕も布じゃなくてサングラスにすればよかった! そしたら『あっちからイケメン来る!』って噂になったのに!」
「目立ちたがりですか」
「目立ってなんぼでしょ!」
五条先生はやれやれと言わんばかりの顔をする。
その仕草がなんかムカついた。
「ま、いいや。じゃ、今から高専に行くよ。はい、切符」