第11章 自分のために
「自負するほど整ってないですから」
「でた、でた」
「……実際、前の学校でもよく言われてたんですよ」
言われてたっていうか、呪われてたっていうか。
「《綾瀬皆実は言うほどかわいくない》って」
「嫉妬は怖いね」
嫉妬。
確かにそうだったのかもしれないけど。
でもその呪いは事実だった。
「皆実」
私の頭に五条先生の手が乗る。
見上げたら、五条先生が笑ってた。
「僕といるオマエは、かわいいよ。少なくともね」
そう言ってくしゃくしゃと私の髪を掻き乱した。
街に出るって言うから、せっかく頑張って髪を結ったのに、これじゃあグシャグシャだ。
急いで直そうとしたけど、五条先生がそのまま私の髪を解いた。
完全に、台無し。
「悠仁と会うのにかわいすぎるから、いつも通りにして。……そのほうが多少は視線も減るよ。多少だけどね」
五条先生は私のヘアゴムを奪って、人差し指でクルクルと遊んだ。