第8章 秘匿死刑
「つーか、なんでそんなに綾瀬に怒ってるんですか?」
「皆実に聞けば?」
「アイツ、教えないんですよ」
鈍感皆実でも、心当たりはちゃんとあるんだろうね。
《強い男なら誰でもよいのだろう?》
僕が怒ってる理由を分かってるなら尚更さ。
(耐えられなくなったら、僕を頼れよ)
あんだけキツそうな顔してたら、さすがに皆実からキスしてくるかと思ったのに。
皆実はそうしなかった。
頑なに、僕との距離を詰めなかった。
この期に及んで、まだ僕を頼りきらない皆実にも。
何より、呪いの言葉に翻弄されてる自分にも腹が立つ。
こんな些細なことに感情揺らされてる自分にも。
らしくなくてめちゃくちゃムカつく。
だから、恵の質問に僕も答える気はない。
「さ、着いたよ」
しばらくして、硝子の診療室に着いた。
「ボロボロな身体と、その皆実のことしか考えられない頭治しておいで」
「誰のせいだと思ってるんですか」
「皆実のせい」
そう、全部皆実のせい。
本当に、こっちの調子を狂わせる天才なんだよ、あの子は。