第8章 秘匿死刑
※五条視点
虎杖悠仁が僕等側につく覚悟を決めた。
それさえ済めば、もうここに用はない。
明日には悠仁が東京へ来る。
だから僕たちは先に住処に帰ってきた。
帰ってきたついでに、虎杖悠仁のことを一応報告するだけしようと思って、今は高専に寄り道してるところ。
病人を硝子に診せるついで、ってのもあるけど。
「綾瀬のこと、また置いてきたんですか」
恵が僕を見上げて尋ねてきた。
途中で僕の自宅に寄って、皆実は部屋に閉じ込めてきた。
理由は簡単。
言っとくけど、別に怒ってるからじゃない。
「今にも倒れそうな子を連れ回すほど悪趣味じゃないつもりだけど」
「気づいてたんですか」
当然。
恵の見舞いに行った時から様子がおかしいことには気づいてた。
加えて、火葬場なんてさらに負の感情が集う場所。
皆実が体調を崩すことは、分かってた。
「……気づいてたなら、なんで呪力抜いてあげないんですか」
少しだけ怒気を含んだ声音で、恵は僕を非難する。
「何? 恵の目の前で皆実にキスすればよかった?」
「そういう意味じゃないですよ」
「ああ、恵が皆実にキスしようとしてたんだっけ」
「殴りますよ」
「殴れるもんならどうぞ」
僕が笑うと、恵は眉をひそめた。
その顔、そっくりそのまんま僕が返してやりたいくらいなんだけど。